序 章 先程届いた手紙を、俺はスッとナイフを滑らして封を開けた。閉じてある蜜蝋の印は父の物。手紙は一枚。 自分達の近況と、こちらを案ずる言葉。変わり映えのない文面にさっと目を通して、最後の一文で俺の顔が無表情から険しいものへと変わった。 カッとなって手紙を破り捨てると、俺は部屋の隅に置いてある姿見の前に行き、ドンッと拳を打ち付けた。 「…っ…ワケわかんねーぜ……っっ!」 手紙の最後にはこう書かれていた。 『私達と共に旅をしている者を二人屋敷へと向かわせた。私達が戻るまでおまえの付き人とするが、他の使用人と同等の扱いはするな。丁重にもてなすように』 姿見は、俺の瞳の奥底にゆらりと燃えている青い怒りの炎をも、鮮明に写しだしていた。 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||