今日が終わってしまわない内に―――。 雪がチラつく夜闇を走り抜ける。閑静な住宅街は、もう既に夜中に近い時間のためか人気も無く、家々の灯りも点々としている。今、この闇を照らすのは、凍える空気の中に淡く浮かび上がる街灯だけ。 身を裂くような寒さに凍えるけれど。 容赦無く吹き付ける北風は頬を刺すけれど。 空から舞い落ちる純白に少しだけ癒される。 早く、あなたに逢いたいから。 道に薄く積もった雪に足を取られ、何度も転びそうになりながらも、走る速度は緩めない。 これから訪ねて行ったら、あなたは何て言うのだろう。 また、突然押し掛けて来たと怒るのだろうか?それとも、呆れるだろうか。 その後、鞄から取り出した物を渡したら、一体どんな顔をするの? あなたはきっと、数えきれない程それをもらっているだろう。今日はそういう日だから。 おまえも世間に便乗するのか、と言いたげにウンザリする顔よりも、柔らかく笑ってくれる顔が見たい。 そして、出来るなら、あなたが数多く受け取ったそれらの中で、自分が渡すそれが特別になれたら良いのに……と思う。 急がないと、急がないと―――…。 もうすぐ、今日という日が終わってしまう。 今日は何の日か知ってるか?工藤。 大好きな奴に、「大好きや」って言う日なんやで。 次の角を曲がれば、愛しいあなたの家が見えてくる。真っ暗な中に暖かな光を灯して。 扉を開けた途端、驚いたような表情の後すぐに、はにかんだ笑顔を見せてくれたあなたに力いっぱい腕を伸ばし―――。 「工藤〜!ハッピーバレンタイン♪大好きやで!!」 |
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