「おまえ……、まさか………」
新一が動きを止め、そう呟いたところで平次は意識を手放した。
何が「まさか」なのだろうか…。
何度も絶頂を迎えさせられ、まともに働かない頭では適切な回答を導き出すことが出来ず、平次は静かに瞳を閉じた。
どの位経ったのか。
平次は何やら柔らかい感触が全身に心地よくて、一つ寝返りを打つと、まどろんだ瞳をそっと開いた。薄暗い空間が視界に入り、平次は一瞬ここがどこなのかわからなかった。
意識がはっきりしていくにつれ、その風景が自分のよく見慣れた場所であることに気づく。そして、先程から背中に感じる柔らかいものがベッドであると理解した。
……ここは、俺の部屋や………。
正気に戻った平次は次の瞬間、はっとしたように起き上がる。急な動作で先刻新一に散々嬲られた腰に負担がかかり、思わぬ激痛に彼は悲鳴を上げると再びベッドに突っ伏した。
「つっ……!!」
身体中が痛い。でも、それ以上に心が痛かった。胸が苦しくて、息をするのも容易ではない。
滲む視界の中で、平次は新一を想う。
彼が怒るのも当然だった。それ程のことをしてしまったのだ。卑怯な手段で彼を奪ってしまった。だから、彼の行動を止める資格も責める権利も無かった。
されるがままに身体を開く自分を、彼はどう思ったのだろう。
初め、潤んだ瞳で見上げた平次を、新一は面白くなさそうに冷ややかな眼で見下ろしていた。愛情など、微塵も存在しない。
ただの「戒め」。
新一の心はずっと傷ついたままだった。その痛みを平次にも思い知らせるために同じことを繰り返した。その目的を、今日果たした。
もう2度と元には戻れない。会うことさえできないのだろう。
平次は枕に顔を埋めながら、その両脇に置いた手に力を込める。
あいつにはもう、俺と会う理由は無い。憎んでいた俺と、会ってくれるわけがない…。
平次はふと気がついて、横になったままの自分の身体を見下ろす。汚れた服は着替えさせられ、パジャマを着せられていた。ベッドの脇にあるサイドテーブルの上には、平次のジーパンの中に入れてあったはずの部屋の鍵。
きっと、新一が気を失っている平次をここへ運び、着替えさせてくれたのだろう。
不意に平次の頬を一筋の涙が伝い、シーツに流れ落ちて染みを作る。顔は困惑したように歪む。
「な…んでや……?工藤……っ、何で、こんなことするんやぁっ!!」
悲痛な叫び声と共に、溢れた涙が止め処なく零れていく。
真意がわからない。なぜ、そのまま放っておかなかったのか。憎んでいたのなら、あの行為がただの「戒め」だったのなら、なぜ……。
平次には、こんなことをする彼の気持ちがわからなかった。
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